変化の時代を生き抜く未来創生リベラルアーツ
令和4年4月、リベラルアーツ・STEAM教育研究センターを設置
文理融合人材育成を全学的に推進
滋賀大学では、卒業生全員がリベラルアーツを身につけることを目指しています。生成AIをはじめとする技術革新が目覚ましい進化を遂げる時代を生き抜くには、単一の専門領域に関する知見のみならず、幅広い知識をもち、様々な角度から物事を考えられる柔軟で創造的な思考が必要です。単に知識を持っているだけでは不十分で、自ら考え、価値を生み出す思考が不可欠なのです。こうした創造的思考を生み出すための教育がリベラルアーツ教育です。さて、「リベラルアーツ教育=教養教育」と思われている方も多いのではないでしょうか。本学が考えるリベラルアーツ教育は少し違います。「豊かな人間性とグローバルな視野を備えた専門性の高い職業人の養成と、創造的な学術研究への挑戦を通して、人類と社会の持続可能な発展に貢献する。」という理念の実現にむけ、リベラルアーツ・STEAM教育センターでは全学的な文理融合教育の実践・授業開発を先導し、さらなる改革にむけていま取り組んでいます。
リベラルアーツ・STEAM教育研究センター長 松丸 真大
1 滋賀大学が目指すリベラルアーツとは 専門性×多様性
滋賀大学は、いま、未来創生型の文理融合(STEAM)教育を通して次世代の価値創造を担う人材の育成を進めています。学生の皆さんが自ら考え、発想し、自分の道を切り開いていく、生涯にわたって揺るぐことのない精神の軸を育て、社会への価値の創出を可能にする人材の育成です。こうした人材を育成するため、全学的にリベラルアーツ教育の推進に取り組んでいます。
ここでのリベラルアーツと教養は似て非なるものです。教養教育という言葉を聞いたとき、「専門教育の前の基礎教育」とイメージされる方も多いのではないでしょうか。つまり、特定の分野に進む前に、幅広い知識を身につけることを目指す教育です。
一方、ここでのリベラルアーツとは、幅広い知識と創造的思考を備え、かつ価値を自ら生み出していく人材になるためのものです。つまり、幅広い知識を獲得するだけの教育は教養教育であり、さらにそこから創造的思考、新たな価値創造ができるスキルを身につける教育がリベラルアーツです。滋賀大学ではこのリベラルアーツ教育を全学的に推進するため、令和4年度には全学共通教養科目を再編して、専門科目との並行的教育科目に位置付けました。
では、滋賀大学では何をしているか。特に重視しているのは「クリエーティブ・スタディーズ分野」の科目充実と「データサイエンス」教育の推進です。
「クリエーティブ・スタディーズ分野」は全学共通教養科目の一分野であり、全学部の学生が必ず学びます。「アート思考」、「デザイン思考」、「アントレプレナーシップ」など変化の時代を生き抜くために不可欠となる思考を磨きます。
そして、滋賀大学では全学部においてデータサイエンスの基礎的な能力を身につける科目が必修です。また、さらにデータサイエンスを学びたい学生のために、全学部で応用基礎レベルのプログラムを用意しています。いわば、データサイエンスを横軸とするリベラルアーツを推進しているところに本学の教育の大きな特徴があります。
センターの取組
当センターは、全学的な文理融合(STEAM)教育のさらなる推進にむけ、令和4年度に創設されました。教養教育及び専門教育全般の質保証を担う教育・学生支援機構教育推進部門と連携し、
- リベラルアーツ・STEAM教育研究に係る調査及び研究
- 文理融合人材育成のためのカリキュラム研究・開発及び普及
に取り組んでいます。
文理融合教育で目指す人材像
本学が実施する文理融合(STEAM)教育では、学生の皆さんが以下の5つの階層からなる能力・思考を、段階をおって獲得していくことを目指しています。
- ① 数理・データサイエンス・AI リテラシー
- ② 分野を横断する幅広い知識と文理横断的な思考
- ③ 総合的な知をベースとした俯瞰的視野と論理的思考
- ④ 規範的判断力と課題発見・解決力
- ⑤ 価値創造力と構想力
いま、当センターでは、本学の文理融合(STEAM)教育をさらに充実させ、幅広い知識をいかしつつ価値創造できる人材を育成するため、これら5つの能力・思考を体系的に獲得するための新規プログラムの構築、データサイエンス教育のさらなる全学的拡充、課題発見・解決力を磨く分野横断型・課題解決型の新たな授業開発に取り組んでいます。
2 リベラルアーツ×データサイエンス
数理・データサイエンス・AI教育プログラムの推進
滋賀大学の目指すリベラルアーツ教育では、データサイエンスを不可欠なものとして考えています。本学では、数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル・応用基礎レベル)を全学的に実施しており、リテラシーレベルについては全学部で必修です。このプログラムは文部科学省からの認定を受けており、リテラシーレベルは全学で実施しているプログラムが特に優れているとしてリテラシーレベルプラスに選定、応用基礎レベルはデータサイエンス学部のプログラムが応用基礎レベルプラスに選定されています。
3 リベラルアーツ×生成AI
これからの時代、AIの活用は避けては通れません。滋賀大学では令和5年7月に生成AIの利活用についての指針を公表しました。生成AIの使用について、一律に禁止することはせず、生成AIを活用することを推奨しています。当センターでは、生成AIの教育への活用のため、全学的な知見の共有を図っています。今後、生成AIの活用に関するアンケート結果等を公表する予定です。
4 学修成果の可視化
文理融合教育で得た学修成果の可視化にも取り組んでいます。数理・データサイエンス・AI教育プログラムでは電子的な修了証明である「オープンバッジ」を発行しています。現在、学内のさまざまなプログラム・活動の成果の可視化を目指し、当センターを中心に学内で発行するオープンバッジの体系化にむけた取組を進めています。今後、学内で発行したオープンバッジの一覧を順次公表していきます。
5 教育改革・FD活動
全学教育を推進する組織である教育・学生支援機構教育推進部門と協力し、優れた教育活動を顕彰する「教育実践優秀賞」の選考や、データサイエンスや生成AIの活用をテーマとするFD活動の推進に取り組んでいます。また、リベラルアーツ教育に関する活動の点検のため、大学の質を自ら保証する「内部質保証」の取組を推進しています。
TOPICS
本センターの活動や教育改革関連の取組を下記でお知らせしています。
現在、当センターでは、リベラルアーツを身につけるための新たな教育プログラムや、本学の異なる分野の教員がコラボした新たな授業の開発に取り組んでいます。順次こちらの欄でお知らせします!
20240126 大学設置基準改正について考える職員向け研修を開催
文部科学省から特別講師をお呼びし、大学設置基準改正への対応について考えるグループワークをしました。
20231208 リベラルアーツ科目として学部間連携コラボ授業「デザイン思考」を開講
本学初となる3学系(教育・経済・データサイエンス)教員のコラボによる新たな授業を開講しました。
20230911 FDセミナー(令和5年度)「ポストコロナを見据えた遠隔授業に関する新たな取組」開催
20230718 教育改革フォーラム(令和5年度)「生成AIをめぐる現状と滋賀大学の方針」を開催
国立大学協会ホームページで本学のリベラルアーツ教育の取組が紹介されました
特集【大学と新しい学び】のなかで「データサイエンス」×「リベラルアーツ」による未来創生教育について紹介されています。