11月24日(木)、ゲストスピーカーに堀江良一先生(創価大学客員教授)をお招きし、「外交官の仕事~43年の経験を踏まえて~」をテーマにご講演いただきました(対面とZoomのハイブリッドでの開催)。
堀江先生は、外務省入省後、省内各部署を経験しつつ、イギリス・ケンブリッジ大学で経済学修士号を取得され、紛争地域での国際平和協力隊の隊長を務められた後、世界各国の大使館を渡り歩くなど、一貫して外交官の道を歩んでこられました。今回は、近年大使を務められたミクロネシア連邦、ケニア(エリトリア、セーシェル、ソマリア兼任)での経験を中心にお話しいただきました。
ミクロネシア連邦について。607の島・環礁を有し、国土面積は琵琶湖と同等(約700km²)、人口は彦根市と同等(約11万人)、親日国家(日系人が2割)。また母系社会であることや、歴史の紹介、また世界遺産であるナン・マドール遺跡をはじめとする観光地、当時の安倍首相表敬時のことなど、写真を交えて紹介されました。
ケニアについて。人口がアフリカ54カ国中7位、2050年までには中所得国家(1人当たりGDP3,000~10,000ドル)を目指していること、天然資源はほとんどなく産業は農業と観光に頼っていること、多民族国家であり部族意識が強く、国家へのアイデンティティが強くない点は他のアフリカ国家と同様だが、比較的政治的、経済的に安定していることに加え、首都ナイロビにあるサファリパークやキリマンジャロなどの観光資源について紹介されました。今後は日本企業にとってアフリカ進出の玄関となりうる国とのことです。
当時、堀江大使は「音楽外交」、すなわちケニアの有名な歌を、趣味のギターと歌で大統領や国民に向けて演奏、発信し、親交を深められ、「マサイ族」の称号を得られました。
堀江先生は2022年3月で離任され、現在は創価大学で教鞭を執っておられますが、国際関係論の授業で必ず学生に伝えることとして、外交官は日本が国際社会と協調して国益を追求するために、任国(任命された国・地域)でできることをやっていくが、そのためには相手国の文化や歴史を学び、理解し、尊重することが何より大事で、それが職員、公人、ひいては国民との信頼構築につながることを強調されました。
質疑応答では、スーダン大使館でのテロ支援国家であったため、常に身の危険にさらされたこと、また外交官となるための資格試験やお薦めの本や映画の紹介など、丁寧にご回答していただきました。
外交官として長く経験されたことを堀江先生にリアルに語っていただくことで、異文化交流、多様性を認める社会の重要性を改めて認識する時間となりました。
お薦めの本、映画
- 『ポーツマスの旗』吉村昭 著
- 『日本のいちばん長い日』半藤一利 著
- 『戦争はいかに終結したか』千々和泰明 著
- 『危機の二十年』E.H.カー 著
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